君色-それぞれの翼-
Ⅱ 羽坂学園中学校

入学式-大切な子-




「いってっきまーす。」
紺のブレザーに学年のラインが入ったネクタイ。襞の付いたスカートに紺のハイソックスを身に着け、あたしは初めて履くローファーに足を入れた。
「希咲。」
ドアノブに手をかけたところで、お母さんに呼び止められる。
振り向くと、お母さんはあたしのネクタイを締め直した。
「羽坂入学おめでとう。」
そう言ってやんわり微笑んだ。
今思えば、塾を薦め、いつも送り迎えをしてくれたのも、入学の準備をしてくれたのも、お母さん。
お母さんの支えもあったから、あたしはこうして羽坂の制服を着ている。
「ありがとう。」
そう言うと、あたしの頭を撫でて、「後で行くからね」と言った。
お母さんに背中を押され、あたしは家を出た。




一橋希咲





今日から中学生です。





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