君色-それぞれの翼-
式の為に、全員が体育館の前に移動した。
整列する時、戸谷君を探す。






いた。





やけに長身の人の隣に。これでは戸谷君がとても小さく見える。
あたしは少し吹き出しそうになったが、緊張感がありすぎるこの場では、絶対に笑えなかった。




**********



どこの学校でも、新入生が名前を呼ばれて立ち上がる、というアレがある。あたし的には、人の性格がちょっと分かるので面倒臭くは思わず、むしろ好きだった。


きっと戸谷君は小さい声で立ち上がるんだろうな。



『戸谷皐。』
「……はい。」

予想的中。いつもの戸谷君だ。
その光景に、あたしは少し頬を緩めた。


『一橋希咲』
「はいっ。」

あたしの声に戸谷君は反応したのかな。
あたしが戸谷君の声に反応したように。


―――――



教室に戻ると、後ろにはズラリと保護者が並び、担任が学校方針について語り始めた。
あたしは全くと言って良いほどその話に関心を示さなかった。でも最後になってやっと話を真面目に聞いた。

翌日からの、勉強合宿について。


まず目が行ったのは、部屋割り。沢山の名前の中から、自分の名前を探す。



902号室 一橋希咲




あった。



直ぐに横に続くルームメイトを確認する。



臼井郁那 堀井雪 斉川愛美


臼井郁那は、後ろの席の子だとすぐに分かった。
あとの二人は分からない。

なるようになれ、という気持ちであたしは学園を出た。


「あー、今日塾じゃん…」

土曜日ということを、今になって思い出した。



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