君色-それぞれの翼-


あたしは…言葉を失った。

『大切な子』

女の子…だよね…?

「じゃぁさ…雪遊びの時は…何言おうとしてたの?」
顔の引きつりを隠そうと、無理に笑顔をつくる。しかしその分喋り方が不自然になり、焦った。
「ちょっと昔の事を思い出して…。」
その時気付いた。

気付いちゃったんだ…。


戸谷君の顔が暗くなった事に。



このことについては、もう聞かない事にしよう。そう考え、次の質問に移った。


「じゃあ…あたしを見て『ちょっと違う』って言ったのは?」
戸谷君は視線をあたしに戻した。
「お前に似たヤツがいて…そいつは別に負けず嫌いじゃないから、少し違うなって思っただけ。」




ねぇ…




その似てる子って





大切な子じゃないよね…?








「もしかして…一途?」

話題が見つからなくて、こんなことを聞いた。
言ったあとに、自分が言った言葉に驚く。
何聞いてんだろ、と。
戸谷君がこんな質問にまともに答えてくれるわけ無いのに。

あたしは苦笑した顔で戸谷君を見た。

しかし、戸谷君は少し目を泳がせ、直ぐに答えた。



「超一途。」




その時の戸谷君の表情が輝いて見えて




しっかりしているようで





自信に満ちていて



また見惚れてしまった。




「マジで?」
「マジで。」




ついさっき胸が痛くなるような事を聞いた。



でもこの言葉に感激した。



胸が高鳴る。




明日から合宿。


戸谷君は大切な子に会うかもしれない。
他にも沢山の子に会うだろう。

でも、自分は一途に戸谷君を思い続ける。



振り向いてくれるまで。


「あたしも超一途だよ。」




あたしは戸谷君に言い聞かせる様に宣言した。





< 37 / 99 >

この作品をシェア

pagetop