君色-それぞれの翼-
あたしは…言葉を失った。
『大切な子』
女の子…だよね…?
「じゃぁさ…雪遊びの時は…何言おうとしてたの?」
顔の引きつりを隠そうと、無理に笑顔をつくる。しかしその分喋り方が不自然になり、焦った。
「ちょっと昔の事を思い出して…。」
その時気付いた。
気付いちゃったんだ…。
戸谷君の顔が暗くなった事に。
このことについては、もう聞かない事にしよう。そう考え、次の質問に移った。
「じゃあ…あたしを見て『ちょっと違う』って言ったのは?」
戸谷君は視線をあたしに戻した。
「お前に似たヤツがいて…そいつは別に負けず嫌いじゃないから、少し違うなって思っただけ。」
ねぇ…
その似てる子って
大切な子じゃないよね…?
「もしかして…一途?」
話題が見つからなくて、こんなことを聞いた。
言ったあとに、自分が言った言葉に驚く。
何聞いてんだろ、と。
戸谷君がこんな質問にまともに答えてくれるわけ無いのに。
あたしは苦笑した顔で戸谷君を見た。
しかし、戸谷君は少し目を泳がせ、直ぐに答えた。
「超一途。」
その時の戸谷君の表情が輝いて見えて
しっかりしているようで
自信に満ちていて
また見惚れてしまった。
「マジで?」
「マジで。」
ついさっき胸が痛くなるような事を聞いた。
でもこの言葉に感激した。
胸が高鳴る。
明日から合宿。
戸谷君は大切な子に会うかもしれない。
他にも沢山の子に会うだろう。
でも、自分は一途に戸谷君を思い続ける。
振り向いてくれるまで。
「あたしも超一途だよ。」
あたしは戸谷君に言い聞かせる様に宣言した。