君色-それぞれの翼-

合宿

翌日。合宿1日目。

学校に着いた人からグラウンドに止まっているバスに乗り込んでいく。

同じ小学校の子もいなければ、唯一顔見知りの戸谷君も1組なのでバスが違う。

前の方の席は男子達が五月蠅かったので、あたしは一番後ろの席に座り、カーテンを勢いよく開けた。

窓の向こうには、1組のバス。




見えたものは、男子に溶け込んでいる、あの人。






クールな戸谷君がもう周りに溶け込んでいるのは嬉しいことのはずなのに




分かり合えるのが戸谷君だけのあたしにとっては





少し寂しかった。







何で男子はこんなに馴染むのが早いのか。




そんなことを思いながら、カーテンを閉めた。


********


「一橋さんだよね?」

バスが動き始めた時、前の席に座っていた子が話しかけてきた。

朝が早かった為に寝そうになっていたあたしは、目を擦りながら崩れた体勢を元に戻した。

「私堀井雪っていうんだけど…同じ部屋だよね?」

昨日読んだしおりを思い出す。
確かそんな名前があったような、と思い、笑って頷いた。


雪はよく喋るタイプ。話しているとよく分かった。
でも本性はよく分からない。そんな子。
なんとなくだけど、そんな印象だった。


話せる子が一人もいなかったあたしは救われた。



でも






雪は結構陰口を言う子だった。


だからあたしは少しずつ不安を覚えてたんだ…。


バスに揺られて一時間。
宿泊施設に着き、部屋に荷物を整理した後、あたしと雪は同じ部屋の臼井郁那も交えて話した。
郁那は警戒心が強い感じだったが、馴染んでいくとそうでも無く、明るくて面白い子だった。しかも毒舌。


斉川愛美だけは、他の部屋に行っていて、話す事は無かった。







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