君色-それぞれの翼-

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会いたい。



急に思った。
しおりを広げ、誰を知っているか、という話に発展した時だった。

「希咲は同じ小学校の子いないの?」
雪に聞かれて頷いた。
「じゃぁ知ってる子もいないの?」
郁那に聞かれて、首を横に振る。そして指差した。
1組の名簿にある、戸谷君の名前を。



「男子?!」
雪のテンションが急に上がった。あたしは頷く。そして戸谷君の名前をジッと見つめた。



会いたいな…




今、どこにいるかな…



あたしは自分の頬を軽く抓った。
「そろそろ授業だよ。」
何故か目を輝かせている雪にそう言って、その場を離れた。



国語、数学、英語の授業を受けた。
どの教科も最終日に確認テストがあるので、皆必死だった。
でも羽坂の先生は皆面白く、雑談を交えながらの楽しい授業だったので、退屈にはならない。





ちなみに、2組の担任は国語の担当だった。


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「疲れたー…」
初日分の授業が終わり、あたしたちはうなだれた。
もちろん部屋に戻っても、授業の復習やテスト勉強で忙しい。
ずっと勉強、も嫌なので、あたしは勉強を夜に回して適当に寛ぐ事にした。


「あ、じゃぁ希咲、先生のとこ行ってプリント貰って来てよ。」
うたた寝しそうなあたしに郁那が言い、どうせ暇だから、と立ち上がった。
「何の教科?」
「国語。」
「りょーかい。」
畳の上で寝転がる雪を跨ぐようにして部屋を出た。




部屋ほど日当たりが良くなく、周りの空気が冷たく感じる。
廊下に人は殆どおらず、部屋からの明るい声が漏れていた。



『先生たちはだいたいロビーにいますから。』


授業中に聞いた言葉を思い出し、あたしはロビーに向かった。





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