君色-それぞれの翼-
気付いてた。悲しい表情には気付いてたけど、その心の中を考えるほど冷静な気持ちではいられなかった。


その時考えておけば良かったんだ。

戸谷君のこと、彼女のこと…。


『一目惚れじゃ…無いよね…?』


混乱してそんなことしか考えられなかった。


トヤクンガヒトメボレ…?

そんなのやだよ…


足が竦む。手が震える。

再び視線を戸谷君に送ると、目が合った。

どうやら足が竦んでいた間、ずっとこちらを見ていた様だ。

そして戸谷君は




笑いかけてくれた。






身体がスッと軽くなる。
拳が開き、肩の力がゆっくり抜けていく。



あたしが、馬鹿だった。
戸谷君が一目惚れなんてするわけない。



戸谷君の笑顔を見て、あたしは思った。


だって確かに戸谷君が言ったんだもん。



あたしはそれを信じるしか無いでしょ?





『超一途。』






この言葉を。













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