君色-それぞれの翼-
「希咲、話終わったなら行こ。お茶全部飲んじゃうよ。」
郁那の声で我に返った。
「あ、ごめ…ってあぁぁぁぁぁ!!!!半分以上無くなってるじゃん!!」
「だって希咲、話長いんだもーん。」
「『だもーん』じゃない!!あーもぉ!!」
あたしは郁那から奪い返した軽くなったペットボトルをみて溜め息を吐き、残りのお茶を飲み干した。
身体の中がひんやりする。
ほんのり苦い緑茶の味が口に広がる。
しかし、喉の渇きが満たされないまま、お茶は無くなった。
空になったペットボトルをゴミ箱に向かって投げた。
上手く入らなかったペットボトルは跳ね返り、あたしの膝に直撃する。
「…痛い。」
「ばか。」
隣で鼻で笑った郁那に精一杯の嫌味を込めて体当たりし、あたしは集合のかかっている体育館に走った。
体育館で適当な閉会式を済ませ、球技大会は終わった。
現地自由解散ということらしく、あたしは郁那と南と一緒に山を下った。
足が棒になりそうだった。
息を荒くしてようやく着いたバス乗り場。
学校に着いてからのバスに、戸谷君はいない。
乗り遅れたのだろうか。
発車したバスの中で戸谷君の事を考えながら、あたしは疲れを癒す為に眠った。