君色-それぞれの翼-
部活
積極的に部活に参加しなさい。
朝のホームルームで、先生に言われた言葉。
何故今日こんな事を言ったのか…理由は一つ。
今日から体験入部が始まるから。
「体育系はムリ、吹奏楽もムリ。」
体育は苦手だ。吹奏楽は、筋トレ等があるらしいから、入りたくない。
「あー、それ分かる。」
どうやら郁那もあたしと同じ意見。
「南はどうする?」
あたしが聞くと、南は口を開く代わりに、既に記入した体験入部申込書を見せつけてきた。
「…美術部―――?」
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「失礼しまーす…」
放課後、あたし達は体験入部の為、美術室に向かった。
元々絵を描くのは好きだし、美術部ならしんどくない。
入部条件が十分揃っている。
「あ、南ー。と、一橋さんと臼井さん!!偶然だねぇ。」
美術室に入ると、先に来ていた苗と杏奈が迎えてくれた。
「希咲で良いよ。…苗達も美術部?」
当たり前の事を聞いてみる。
「うんっ、絵描くの好きだからー。音楽も好きだから吹奏楽部にしよっかなぁと思ったけど、筋トレやだし。」
苗は親指を立ててにこやかに言った。
皆考えている事が同じなんだな。
郁那も苗も、そして自分も。
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体験内容は、ビニールシートに液体を流し込んで絵を描き、透き通ったステッカーを作ること。
「何描こ~、苗何描く?」
「食虫植物。」
「どんなんだよ!!」
本当、どんなんだよ。
郁那のツッコミに同意だ。
あたしはひょいと美術室から外を見た。
この校舎の中には、他に第三職員室、入試の際、昼食をとった視聴覚室がある。
つまり、グラウンドが見える。
「あ…っ」
現実は、あたしの期待を裏切ることは無かった。
ユニフォームに身を包んだ先輩の後ろに、ボールが大量に入ったバケツを持った、体操服姿の1年生がいる。
野球部の体験入部だ。
「何見てんの~?」
隣にはいつの間にか南がいた。
「いや、別に…」
「何描くか決まった?」
全く考えていない。
さて、何を描こうか。