君色-それぞれの翼-
あたしは目を泳がせた。
「うん、決まった。」
白い液体の入ったチューブを手に取り、円を描いた。
そしてまたグラウンドの状況を伺う。
丁度戸谷君が投げていた。
3年の先輩たちは立ち尽くしたまま、球を投げる戸谷君を見ている。
「相変わらず…」
あたしはボソッと呟いて、戸谷君に見入ってしまう前に、作業に戻った。
「出来たっ!!」
完成したのは、野球ボールのステッカー。
半透明の白と赤の色合いが、我ながら良い組み合わせだと思う。
単純な絵柄だが、戸谷君がいつも手にしている物、というだけで、なんとなく特別な気がした。
半透明のステッカーを太陽の光に当てると、キラキラしてとても綺麗だった。
あたしはステッカーの方向を、太陽から皐に変えた。
ステッカーにうっすらと写し出された戸谷君は、太陽の光で輝いて見える。
まるで心の中にいる戸谷君の様に…。
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あたしは美術部への入部を決めた。
郁那や南、苗と杏奈も一緒だ。
仲良しで楽しい部活…。きっとそうなるだろうな、と心のどこかで思っていた。
中1の5月。
自分の未来など
知る由も無い、と思っていた時期だった。