君色-それぞれの翼-
夏休み
********
嫌な通知表が返ってきて、学校の夏期講習も終わった7月28日。
いよいよ夏休みに突入した。
***********
「で、何するー?」
美術室は冷房ガンガン、手元に氷入りの炭酸ジュース。
窓の向こうでは太陽の下で野球部がグローブ片手にキャッチボール。
夏休み1日目。
見事に日にちがピッタリ重なった野球部と美術部の夏休み活動1日目でもある。
「氷で何か作るー?」
「氷無いしっ!」
課題が無い中、あたしは苗と南と一緒に冷房の風が直撃する所でうなだれていた。暑くて何もやる気にならない。そんな感じ。
「…散歩行こっか。」
ジュースを飲み干した苗が、空っぽになったカップを振りながら言う。
南は冷房から離れたくないのか、動こうとしない。
でもずっと美術室にいるのも暇なので、あたしは苗と一緒に南を引き摺りながら外に出た。
一歩廊下に出ただけでムシムシして仕方無い。
太陽の光が思っていたより眩しい。
「あづー…」
口から出て来るのはこの言葉だけ。
汗をかきながら暫く歩いて、中学部のグラウンドの前に差し掛かった。
ユニフォームに身を包んだ野球部員が沢山いる。
この中から戸谷君を見つけるなんて、容易い。後ろ姿でもすぐ分かる。
そして何よりも
エースナンバーがよく目立っている。
その背番号を見ただけで何でか…努力が滲み出ているのか、誇らしげな気持ちになる。
太陽の眩しさでよく顔は見えないものの、戸谷君は直ぐに見つかった。
普段体育の授業でだらけてばかりの戸谷君は、此所にはいない。
代わりに、目を輝かせた戸谷君がいる。
暑さを知らないかの様に走り、ボールを握っては笑顔を零す。
『野球ってそんなに楽しいの?』なんて思うくらい。
野球が恋人、そんな感じ。
でもそんな戸谷君が好き。
戸谷君が野球を好きな気持ち以上に、戸谷君が好き。
嫌な通知表が返ってきて、学校の夏期講習も終わった7月28日。
いよいよ夏休みに突入した。
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「で、何するー?」
美術室は冷房ガンガン、手元に氷入りの炭酸ジュース。
窓の向こうでは太陽の下で野球部がグローブ片手にキャッチボール。
夏休み1日目。
見事に日にちがピッタリ重なった野球部と美術部の夏休み活動1日目でもある。
「氷で何か作るー?」
「氷無いしっ!」
課題が無い中、あたしは苗と南と一緒に冷房の風が直撃する所でうなだれていた。暑くて何もやる気にならない。そんな感じ。
「…散歩行こっか。」
ジュースを飲み干した苗が、空っぽになったカップを振りながら言う。
南は冷房から離れたくないのか、動こうとしない。
でもずっと美術室にいるのも暇なので、あたしは苗と一緒に南を引き摺りながら外に出た。
一歩廊下に出ただけでムシムシして仕方無い。
太陽の光が思っていたより眩しい。
「あづー…」
口から出て来るのはこの言葉だけ。
汗をかきながら暫く歩いて、中学部のグラウンドの前に差し掛かった。
ユニフォームに身を包んだ野球部員が沢山いる。
この中から戸谷君を見つけるなんて、容易い。後ろ姿でもすぐ分かる。
そして何よりも
エースナンバーがよく目立っている。
その背番号を見ただけで何でか…努力が滲み出ているのか、誇らしげな気持ちになる。
太陽の眩しさでよく顔は見えないものの、戸谷君は直ぐに見つかった。
普段体育の授業でだらけてばかりの戸谷君は、此所にはいない。
代わりに、目を輝かせた戸谷君がいる。
暑さを知らないかの様に走り、ボールを握っては笑顔を零す。
『野球ってそんなに楽しいの?』なんて思うくらい。
野球が恋人、そんな感じ。
でもそんな戸谷君が好き。
戸谷君が野球を好きな気持ち以上に、戸谷君が好き。