君色-それぞれの翼-


最近あんまり喋らないよね。

あたしがそう言ったら、戸谷君は何て言うだろう?


きっとただ頷くんだろうな。

もしあたしが此所で泣いたら戸谷君はどうするんだろう?


きっと何も言わずに…見守る様に目であたしを見るだろうな。


貴方は優しいから…


「一橋。」
「へ?」
「プリント。落ちてる。」
「…あ……」

机の上に置いていたプリントが雪崩が起きた様に落ちていた。
戸谷君はプリントの一部を拾い集めてあたしの机に置いた。
「…ありがとう。ごめん…」
「…最近ボケッとしてる。」
「……へ…」
「…何でも無い。」

そう言って戸谷君が席に着いたところで会話が終わった。


『最近ボケッとしてる。』

あたしは耳は良いんだよ?
だから聞き間違えじゃ無い筈だよね?


今の言葉…戸谷君があたしの事ちゃんと見てくれてたから言った言葉だと思っても良いのかなぁ……?



(ヤバい……涙出そう…)



あたしは慌てて手で顔を覆った。

ホッとして?
嬉しくて?

知らない。

涙の理由は分からない。

でも涙が出そうで…

好き過ぎて…

辛くて…

いつも戸谷君のことばっか考えて…


あたしはおかしくなりそう……


戸谷君が関わってるだけで


あたしは何も見えなくなる…

勝手に涙が出て

勝手に胸が苦しくなる。


笑顔に…なかなかなれない…


嬉しい筈なのに…



何で…?




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