君色-それぞれの翼-

あたしはカップのココアを買って食堂を出た。

体育系クラブの人達がランニングをしている中、邪魔をしないように校舎に向かう。

「――あっ…」

いきなりの事にあたしはカップを落としかけた。
そして慌てて下を向く。

下を向いたあたしの前を


野球部員が走っていった。


溜め息が出る。



…あたしやっぱり逃げてるんだ。



あの人から…


走り去る姿を目で追うとやっぱりあの人が真っ先に目に入った。





……忘れたいよ…


仕草も笑顔も言葉も全部……



出会った事も…




神様…こんなにへこたれて…



あたしは弱虫ですか……?




逃げたい。





逃げたいのに






避けてるのに。






後ろ姿を目で追ってしまうのはどうして…?



真っ先に見つけてしまうのはどうして…?







ワスレタイカラワスレサセテ……








恋すると綺麗になる。


恋すると毎日が楽しい。





そんなの嘘に決まってる…。


貴方との間に出来た距離のせいで





あたしの心にはポッカリ穴が空いちゃったんだから…








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