君色-それぞれの翼-


あたしが話しかけない限り


戸谷君から話しかけてきてくれることは



まずない。



「さっむー!!まだ11月でしょぉー!?」

「でも明後日から12月だし。雪降るかなー。」

「まっさかぁー」


新学期から約3ヵ月…
戸谷君とは全く言葉を交わしていない。
塾にもギリギリに行って、授業が終わればすぐ帰る。


いや…戸谷君の方が早く帰る。


避けられてるのかなーとか思いながら、あたしも結構避けている。



でも相変わらず






後ろ姿を目で追ってしまう癖は直ってない。




今だってそう。



グラウンドで活動している野球部が気になって仕方が無い。

自分の頬を抓りながら、絵を描くのに集中する。


5時を回って杏奈が帰り南が帰り…郁那も帰って美術室はあたしと苗だけになった。


苗はいつも絵を描くのに集中している。
会話に参加しながらも黙々と書き続けている。


筆を水につける音がやけに大きく感じた。

暫く経って静かすぎる美術室で、あたしの集中力は途切れた。

そして





思わず窓からグラウンドを眺める。



何で見ちゃうんだろう…




避けてる人の筈なのに…。




< 88 / 99 >

この作品をシェア

pagetop