君色-それぞれの翼-



でも、謝るチャンスは全く無かった。


次の休み時間も、その次の休み時間も、その次の休み時間も、戸谷君の周りには友達がいた。


悪いけど…あの中に入っていく勇気なんて、あたしは持ち合わせていない。


返す時に謝ろう…。


放課後、戸谷君が既に部活に行った後の1組で、あたしは思った。


********



部活が終わって、あたしは苗と郁那と一緒に美術室の校舎を出た。

昼より一段と冷たくなった風邪が、身体を震わせる。

「寒いねぇ、毎日。」

郁那が暖かそうなマフラーを巻き直しながら零した。

そうか…もう、12月。

11月に比べ、気温は更に下がってきた。そろそろ雪が降っても不思議ではない。

あたしもマフラー持ってこようかな…


ふと、寂しい首元に触れてみると、自分の手がとても冷たく感じた。


「あ、秋山。」

下駄箱の前で、郁那が足を止めた。

「よう、今帰り?」

秋山君――秋山要は、片手を上げて少し笑った。

秋山君は野球部の中で一番の長身で、6番サード。

野球部に詳しい苗が言ってた。

「俺らバスケして帰るけど、やる?」

「遠慮しとく。」

秋山君の誘いを郁那はバッサリと断った。

てか……

俺ら……?


「要ボール持ってきたー」

「おー、サンキュー識!!」


出た。じゃあ…


「要…俺多分あと10分位でバス開く…」


彼は顔を背けながら滑川君の後ろから出てきた。


…あー

やっぱり……



戸谷君も…。


「あ!!」

全く言葉を発しず、ずっと後ろにいた苗の声にあたしと郁那が反応する。

「美術室に忘れ物しちゃった…取って来る!!」

そう言って焦った表情の苗は、早足でその場を去っていった。


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