予想外の恋愛



ワンピースの支払いを済ませて長い間うろついたショッピングモールを後にする。


「ねえ、待ってほんとにどういうこと!?私がこれ着てどーすんのよ!」

「そういうことだろ」

「だってこれ…誰かにプレゼントするために買ったんじゃ…」

「誰が他の女にやるって言った?全部お前にだ。しょうもない心配しなくても似合ってるから」

「!?」


まさか、これが全部自分のための物だったなんて夢にも思っていなかった。

どういうつもりなのか、
なぜこんなことをしたのか、
どうして…。

考えたら考えるほど、信じられないような答えしか浮かんでこない。

それだけはないだろうとブンブン首を振り必死に否定してみても、正解がわからない。


車に乗り込み外に出ると、もうすっかり暗くなっていた。

考えてみればもう何時間も一緒にいるのに、それはあっという間の時間だった。
…つまり、楽しかったのだ。

散々振り回されたと思っていたのに、嫌な気持ちはまったく無くて。
横暴で融通の利かない男だと思っていたのに、今はそうやって引っ張ってくれるのが男らしく感じて。


”似合ってるから”

この男が私にお世辞なんていう筈がない。なんの得にもならない。
だからあの言葉は本心だとは思う。だけど今までの態度や言動を思い出すと、信じられない言葉だった。



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