予想外の恋愛
「乾杯」
「何に?」
「俺の自己満足に」
カチンとグラスを合わせて、ピンク色に輝く液体に口を付けた。
ホテルの最上階から見える夜景は、とても綺麗だった。
建物の明かりが様々な色に瞬いて、道路に並んでいる街灯が光の道を作っている。
走っている車のライトでさえもいい装飾になっているから不思議だ。
「…私てっきり、朝田さんには彼女かそれに近いような女の人がいて、その人への贈り物を選ぶために連れてこられたと思ってました」
「え、俺彼女いるけど」
危うくフォークとナイフを落としそうになった。
予想以上に今の朝田さんの発言は、自分にとって破壊力のあるものだったらしい。
「…え?」
「嘘」
「…は?」
「だから嘘」
「………な…?」
「彼女なんかいないし、そうなりそうな女も…まだいない」
ポカンとして朝田さんの顔を見ると、ニヤニヤしながら私を見ている。
「なに、それどんな表情?」
「あ、焦っただけです!もし彼女がいるならこんな風に二人で会ってたら彼女に申し訳ないって思って」
「…あっそう」
それだけ、本当にそれだけ。
この人に彼女がいたらこれから先の接し方も考え直さないといけないから。
カフェであんなに喋るのも控えたほうがいいと思ったから。
…ただそれだけだ。