予想外の恋愛



「じゃあ今日はまさか、このお店に行ってみたいけど一緒に行ってくれるような人がいないから私で妥協したってところですか」

「もうそれでいいわ」

「でも朝田さん、社内ではモテモテだという噂ですけどね」

「…中島の野郎」


いらんこと言ってんじゃねえ、とか思ってるんだろうなと思い、ちょっと笑ってしまった。


「なに笑ってやがる」

「いえ?なんでも」

「社内での俺は猫かぶってるからな。どうせ一緒にディナー行くような相手もいない萎びた奴だよ、俺は」

「なにそれ」


思わずふふっと笑ってしまった。
普段あれだけ俺様な人がこんなことを言うと、変な感じだ。


「…お前がそうやって俺の前で笑ってるとこ、初めて見た」

「え、嘘」

「普段からニコニコしてればいいものを。お前も大概頑固だよな」


そう言った朝田さんこそ、見たこともないような優しい顔で笑っていた。

この人とこんな風に笑いあえる日が来ようとは。
明日は記録的大雨になるかもしれない。




運ばれてくるコース料理はどれもとても美味しく、奇跡的に朝田さんとの雰囲気も良く、なんだかとても幸せな時間だった。




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