予想外の恋愛


それはいつだったか、前にも聞かれたことのある言葉だ。


「嫌いじゃ、ないと思います…」

「じゃあどう思ってる?」

「…わかりません…。あんなにいつもいつも言い合いばっかりで、まあ今でもそれはそうなんですけど、なのに急に優しくなったり態度が変わったりで。
正直、何考えてるのかわからないのが本音です」


私の中の朝田さんは、口が悪くて態度がでかくて性格も難ありで。
そのイメージが強すぎて、ふいに優しくされるとまるで別人のように感じてしまうのだ。
そしてそれに私の心は大きく揺さぶられる。


「…他に好きな人がいる?」


びくっと自分の肩が動いたのを感じた。


「そういうわけじゃ…」

「例の元カレ?」


中島さんの核心を突く質問に、自分でも気持ちの整理が出来ていないことを気付かされる。

近藤くんの告白は、私に過去の懐かしい気持ちを思い出させてくれた。
そうして安定しようとしていた自分の気持ちが、揺さぶられることでぐらつくのだ。


「やり直せば…きっと、幸せにしてくれる人です」

「そっか。ナギサちゃんは幸せにしてもらいたいの?」

「え…?」


そんなの、誰だってそうなんじゃないのか。
今よりも幸せになりたいって思うのは自然なことだと思っていたけど、おかしいことなんだろうか。


「ごめん、ちょっと意地悪な質問だったね」


私の困った顔がおもしろかったのか、中島さんは笑いながらコーヒーを飲んでいる。

< 116 / 218 >

この作品をシェア

pagetop