予想外の恋愛


「朝田はもともと、人に自分の感情を見せないタイプだったはずなんだ。会社でのあいつはすごく無理して自分を作って。まあ、怒る時ははっきり怒るんだけど」


確かに、会社では猫かぶってると自分でも言っていた。


「それがナギサちゃんの前だと真逆でさ。ナギサちゃんと関わっていくうちに、自分の手で自分をがんじがらめにしてた鎖が外れていってるみたいで。自然体っていえばわかりやすいかな。
だから最近は、社内でのあいつの印象も変わってきてるみたいだ」

「え…でももともと社内での朝田さんは優しくて仕事も出来て、エースみたいな存在だったんじゃ…」

「そう。優等生だね。優しい、仕事が出来る、誰からも信頼されてそれを裏切らない。だけど人間味がなかったんだ。弱い部分なんて絶対に人に見せないし…こう言ったらなんだけど、まるで作られたロボットみたいだった」


まったく違う。
私の知っているあの人と。

どっちが本当の朝田さんなんだろうって思っていたけれど、どうやら最初から本当の自分を私に見せてくれていたらしい。


「後輩や上司と仕事以外の話もよくするようになったし、飲み会にも前より参加するようになった。何より努力してる姿とか苦労してるところを隠さないようになったのが大きいかな。その背中を見て自分も頑張ろうって思う奴が増えてるし」

「…急にそんな風に変わったきっかけって」

「だから、それがあいつの中でナギサちゃんなんだよ」


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