予想外の恋愛


「私、朝田さんに特別なにかをしたことってありません」

「うん。それがいいんじゃないかな。朝田だって、なにかをしてほしかった訳じゃないと思う。…だからこそ自分の誕生日だって言わなかったんだろうしね」


そこが引っ掛かる。
私は言って欲しかった。
言ってくれればあのコーヒーカップだって、違う意味を持っただろう。
あのディナーだって、おめでとうと言えただろう。

与えられるばかりで私は…あの人に対してなにかをしたことが本当にない。

そんなことをする必要なんて、今までだったら無いと思っただろう。
だけど今は、何も出来ない自分にこんなにも腹が立っている。


「朝田さんが喜ぶことって…なんですかね」

「え…」

「何をしたら朝田さんは嬉しくなりますかね」

「…それを俺に聞いちゃうところがまた、なんというか…。今の朝田を喜ばせるものなんて、この世で一番持ってるのは誰だと思ってるの」



よく考えて、と言い残して、中島さんは帰っていってしまった。



よく考えて…と言われても。
いい案なんて出てこない。

どうしようかと悩んでいる時、ちょうどいい相談相手がいることを思い出した。


慌てて携帯を取り出して、相談があるとメールを送った。





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