予想外の恋愛
「あ、いやなんでもない」
「まさか客と?そんな酷い客いるのか?」
「ち、違う違う!お、弟!弟がよくお店に来るんだー。それでたまに兄弟喧嘩みたいな感じで…」
我ながら苦しい言い訳だ。
心のなかでミナトに謝る。
「ああ、なんだびっくりした。ナギサが喧嘩したり言い合いしてるイメージって無いからよっぽど客に酷いこと言われてるのかと思ったけど…弟なら納得」
「…え?」
「喧嘩とかするタイプじゃないだろ?ナギサは。昔からニコニコしてるイメージだよなあ」
あれ?と思う。
まさか近藤くんに自分がそんなイメージを持たれているとは。
結構言いたいことは言ってしまう性格だと自分では思っているし、男兄弟がいるせいか大人しいほうでもない。
もし私と朝田さんとの会話を聞いたら、近藤くんは驚くかもしれない。
…幻滅されるかもしれない。
「俺は結構喧嘩っ早いし敵作るタイプだから。ナギサのそういうとこ羨ましいよ」
「…ええ?」
「高校の時もよく先輩と喧嘩して先生に呼び出されたりしてたよな、俺」
知らない。そんなの全然知らない。
なにかがおかしい。
私の中の近藤くんのイメージは優しくて、喧嘩なんて絶対しなくて、心が広くておおらかで。
どうしてこんなにお互いの認識がずれているのだろう。
首を傾げながら近藤くんの顔を見つめると、照れたように視線を下へと外された。