予想外の恋愛
「…こないだも思ったんだけどさ」
軟骨のから揚げに手を伸ばしていると、近藤くんが思い詰めたような顔でそう切り出した。
「ナギサは時々、上の空になるよな。俺と話してても心はどこか他のところにあるっていうか。
昔はそんなことなかったんだけど…やっぱりこの7年間、俺の知らないことが色々あったんだろうなってすごく思うんだ」
自然と箸が止まった。
「あ、なんでそんなこと言うんだって顔してる。…見てたらわかるよ、俺ナギサのことは誰よりも」
近藤くんは笑いながら話しているけれど、その笑顔はとても痛々しいものだった。
何も言い返せない。
「…悔しいんだ。こんなことならもっと早く全部言っとけばよかった。卒業したあとすぐに…いや、別れたあとすぐにぶちまければよかった」
どうして?
今の私は近藤くんとやり直すつもりでここに来たのに。
この人となら次は上手くいくって思えるのに。
こんな気持ちを持っていても、私は近藤くんを安心させてあげられるような態度をとれていない?
「あの、私…」
「告白の返事は焦らなくていい。俺、待つから。だけど…昔からずっとナギサのことを好きだったのは俺だよ」
真っ直ぐに私を見つめているその目は、強い意志を持っているのに揺れていた。
「…俺なんだよ」
その表情がまるで泣き出しそうに歪んだと思ったら、小さく息を吐き出してフッと口元だけで笑った。