予想外の恋愛



まさかと思い、目を凝らしてみる。

車によりかかって立っている人影を見つけた。
その人はこっちを見ている。


…朝田さんだ。

もうなんども見てきたその立ち姿は遠くても見間違うことはない。
今夜がもし明るい満月じゃなくても、きっと私は気付いてしまっていただろう。


近藤くんの腕は緩まる気配がない。
ひたすらに私を包み込んで、顔を上げない。


見られている。

朝田さんが、見ている。

スーツ姿のその人影の表情まではよくわからないけれど、私の家の前できっと私を待っていた。



「…ナギサ…」


近藤くんの苦しそうな声がした。

体が離れたと思ったら、両肩に手を置かれて顔を見つめられた。

その顔がだんだん近づいてくる。


私は、得体の知れない焦燥感に駆られた。

近藤くんに声をかけようとした瞬間、バンっと音がしたと思ったら朝田さんの乗った車が遠ざかっていった。


「あ……」


思わず声が漏れた。

すると近藤くんがキスする寸前で止まった。


「……今、何を考えて…何を見てた…?」


ドクっと心臓が音を立てた。


何を焦ってるんだろう。

私はこの人とやり直すと決めたはずだ。
だったら、別に朝田さんにこの状況を見られようとどうでもいい。

だいたい、どうして人の家に勝手に来ていたんだ。
勘違いされてしまうのに。

だから朝田さんに見られるぐらい、大したことじゃない………。



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