予想外の恋愛
「近藤くん、あのね、私…」
”近藤くんとだったら幸せになれると思うの”
「私……」
”昔みたいに、また好きになれると思うの”
言おうと思っていた台詞は、頭に浮かんではくるけれど口から出て来てくれない。
こんな、こんなつもりじゃなかった。
どうして私の頭の中は近藤くんで一杯になってくれない?
どうしてこんな時まで違う人で満たされる?
『おいコラ魔性女。お前明日も出勤か?』
『お前、顔赤いけど。何意識してんの?』
『誰が他の女にやるって言った?全部お前にだ』
『…ナギサ』
…どうしてこんなときに、自分の気持ちに気付くの?
「私、近藤くんと」
”やり直したい”
「近藤くんとは、付き合えない」
予想外だ。
完全に予想外。
罵られてもいい、殴られてもいい。
近藤くんに抱き締められながら、あの車を追いかけたいと思ってしまった私に、思いっきりヒドイ言葉を投げ付けて欲しい。
「…俺じゃ、ダメなの?」
絞り出したようなか細い声で近藤くんが問いかける。
だけど不思議なほど、私の気持ちはもう一つの方向しか向いていなかった。
「…そうみたい」
近藤くんが私の目元を指で拭った。
どうやら私は泣いているらしい。
流れる涙には色んな感情が混じり過ぎていて、ずっしりと重みがあるような気がした。