予想外の恋愛
「…他に好きなやつがいるのか?」
今までだったら全力で否定しただろう。
だけど私は気付いてしまった。
たまに感じていたドキドキ感、ふいにかっこよく見えてしまう横顔、触れられると高鳴る鼓動。
初めて名前を呼ばれたとき、他の誰とも違う感情を覚えた。
もうこの想いには言い訳は出来そうにない。
「…うん」
「今の車の男?」
「えっ」
「…家の前に着いた時点で気づいてた。関係ないかと思ってたけどナギサがずっと見てたから」
まさか気付かれていたとは思わなかった。
男の人って、見ていないようでしっかり見ている。
鈍感に見えて、実は繊細だ。
「そっか……」
小さく呟いて、近藤くんは空を見上げた。
満月が照らすその顔はとても美しかった。
「ナギサが他の男を見てること、前から知ってた。俺といるときも違う奴のこと考えてるなってわかってた。どんなに俺が今更好きだって言ったところで、ナギサにとっては全部過去の恋愛なんだって…ごめん、本当は知ってたんだ」
…そうだ。
私が近藤くんに対して思うことはすべて過去に囚われてのことだった。
今の近藤くんに出会ってから、過去の恋愛のことを思い出して戸惑って、過去の幸せと苦しみに迷って。
「俺じゃ幸せに出来ない。それがわかって悔しいけど、ナギサには今の幸せを知ってほしい。
…まあ、俺と付き合った過去があったからこそ今のナギサがあるんだもんな。そういう意味では俺も嬉しいよ」