予想外の恋愛
近藤くんと話していて、お互いの認識がずれていたのはきっと、昔の思い出がキレイに思えて悪い部分を忘れていたのかもしれない。
「色々困らせてごめんな。だけどもしかしたら俺も、ナギサに会って懐かしくて高校生のときを取り戻したかったのかも」
「私、懐かしい気持ちをたくさん思い出したの。当時は…近藤くんに振られたことは悲しかったけど、それ以上に今は楽しい思い出がいっぱい浮かんでくる」
「俺もそうだよ。別れた後は苦しかったけど今は…少しスッキリした、かな」
近藤くんの声がさっきみたいな弱々しい感じじゃなくなっている。
思いをぶつけて胸のつかえが取れたようにも見える。
「卒業アルバムの言葉、こないだ見たんだ。…嬉しかった。
私のほうこそ、近藤くんに出逢えて恋をしてよかった。幸せだった」
「ありがとう。…泣くなって。お互い、もうキレイな思い出に出来るんだから」
とめどなく溢れる涙は、近藤くんの袖に吸い込まれる。
「付き合ってた頃、私が冷たかったりしたのはね、緊張して上手く喋れなかったからなの」
「え?」
「近藤くんの前じゃ恥ずかしくて緊張して、気持ちと態度が噛み合ってなかったんだ」
初めて打ち明けることだ。
それを言うことさえ恥ずかしいと思っていたけれど、今は違う。
「好きだったよ、すごく。ものすごく」
「俺もだよ、ナギサ」
そう言って近藤くんは、また優しく私を抱きしめた。
まるでこれで最後だというように、優しく優しく引き寄せて。