予想外の恋愛
答えのその先
「…うん、なかなかいい感じになってきたんじゃない?」
「本当ですか!?やった!」
「あとは気持ちに余裕を持って、おいしくなれって思いながら淹れること。手順にばっかり気をとられないように、一連の動作を身体に叩き込んで染み付けること」
「ははあー」
コーヒーを淹れることにもだいぶ慣れてきた頃、店長からの評価も日に日に良くなってきていた。
もはや私もこの魅力に取り憑かれた一人だと言えるだろう。
「ここらへんで一回、誰かに飲んでもらいなよ。自分だけの判断じゃ追いつかなくなってくるからね。もしかしたら僕と違う意見を言ってくれるかもしれないし」
「そんな、店長よりも詳しい人なんて私の周りには…」
「そんなことはないよ。頻繁にお店に来てくれる人なら味の違いはよくわかるだろうね。そうだな、例えば朝田さんとかはどう?」
「わわわっ!」
持っていたカップを落としそうになって咄嗟に掴んだ衝撃で、カウンターの食器がガチャガチャと音を立てた。
「ふー、危ない危ない…」
「…どうしたの」
「なんでもないです!ちょっと手が滑っただけです!」
ふうん、と店長が怪しむような目付きでジロジロ見てくるのに気付かないフリをして、食器を揃え直す。
「…そういえばこないだ朝田さんがさあ」
「え?わあっ」
せっかく揃え直している食器たちがバランスを崩してまたもやガチャッと音を立てた。