予想外の恋愛
「うっわ、わかりやすう」
「もう、店長心臓に悪いです!そのうち食器割れちゃう」
「ほうほう。名前を出しただけでその動揺っぷり。これは何かありましたねナギサさん」
「いやいや誰ですか!別になんにもないですから」
…何もないわけがない。
自分の気持ちを自覚してから、朝田さんの名前を聞くだけでこのザマだ。
朝田さんに対する今までの自分の言動や態度を思い出して、無性に恥ずかしくなる。
穴があったら入りたい。
というか、気持ちのやりどころに困っているのだ。
つまり、好き…だと気付いてはしまったものの、これを朝田さんに伝えるのかどうか、だ。
今まで散々嫌いだの最悪だの言ってきた相手に、好きですだなんて。
しかも相手はあの朝田さんだ。
気持ちを伝えたとしたらどんな顔をされるか、怖くて想像もしたくない。
よく考えたら、キスしそうな距離まで迫られたりしてよくその後平気で話せたものだ。
不思議だ。
好きだと気付いただけで、その人のすべてがかっこよく見えてしまうのだから。
眉間に寄ったしわも、片方だけ引き上げられた口元も、面倒くさそうにポケットに手を突っ込んだ立ち姿すらも。
…だけど一番の問題は、この間近藤くんに抱き締められているところを見られている、ということだ。
きっと誤解してる。
…いや、誤解していたとしても朝田さんが何を感じたか私は知らない。
朝田さんにとってはどうでもいいことかもしれない。
そう考えると、胸の奥がチクっと痛んだ。