予想外の恋愛
「…店長」
「ん?なに?」
「たとえば二本のロープがあって」
「…は?」
「そのうち一本の先には、自分の人生を変えるような幸せなことがぶら下がっています。だけどもう一本の先には、ドン底まで突き落とされるような最悪な結末が待っています」
「はあ」
「どちらも引かなければ、今まで通りの穏やかな暮らしを続けます。二本のロープは、どちらにどちらがぶら下がっているかわかりません。
店長ならどうしますか」
「ふむ、なるほど。究極の選択というやつだね」
私の意味のわからない質問に対して真剣に考えている店長。
次の言葉を息を飲んで待つ。
「あえて紐じゃなくてロープと言ったのは、どちらを引き上げるにしても手に傷を負うということかな?」
ハッとして顔を上げた。
「そしてそれは、それだけリスクが高いということだよね。今のままの暮らしが安全で、守られているから」
…そうだ。私は傷付くのが怖い。
「そんなに今が居心地いいなら、わざわざ高いリスクを背負って頑張る必要ないんじゃない?幸せになれたとしても引き上げ終わる頃には手もボロボロだよ。血も出るかもしれない。別に今のままで…」
「だけど!その幸せはきっと、他の何にも変えられないもので、他の何かじゃ満たせないもので!」
くすっと笑う声が聞こえたと思ったら、店長は楽しそうに微笑んでいた。