予想外の恋愛


冷ややかな声がした。

朝田さんの顔を見るととても鬱陶しそうにしていて、私のことを一切見ない。

中島さんも少し困惑しているらしく、私と朝田さんを交互に見やった。


「は、はあ?言われなくても戻りますっ」


いつも通り、いつも通り。

そう思ってその場を去ったけれど、全身で拒絶するような朝田さんの態度は胸がえぐられるようだった。


いつもと違う。
怒っているというよりは、嫌われているような感じだ。

やっぱりこの前近藤くんといるところを見られたからだろうか。それともその時にかかってきていた電話に出なかったから?


ちらっと後ろを振り返ると、中島さんが朝田さんに何かを話しかけている。
だけど朝田さんはそれにも冷たい態度だ。


あんな風に理不尽な態度には、充分慣れているつもりだった。
平気だった。私も思いっきり言い返すことが出来ていた。

それなのに今はこんなにも苦しい。

あの朝田さんの誕生日、二人で出かけた時はすごく楽しかったのに。今思えばあの時間は本当に幸せな時間だったのだ。



二人が帰るときも、中島さんが会計している横を通り過ぎて朝田さんは一人で外に出てしまった。

中島さんが何か言いたそうにしていたけれど、私はただ笑ってみせた。



やっぱりあの夜のことは誤解だってはっきり言うべきだろうか。
信じてもらえるかは別として、このままの状態が続くなんて嫌だ。


今日の夜一度だけ電話してみよう、と決心して、その日は閉店まで仕事に打ち込んだ。




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