予想外の恋愛
夜9時。
家に帰ってきた私は携帯を片手に迷っていた。
画面にはもう番号が出されていて、あとは発信ボタンを押すだけの状態だ。
「うう〜…」
ついつい唸り声が漏れる。
いいや、押してしまえ。
発信音が聞こえる。
もしかしたら出ることすらしてもらえないかもしれない。
それでも声が聞きたくて、辛抱強く待った。
「はい」
「あっ!もしもし!?」
出てくれた。朝田さんの声だ。
「…なんだよ」
ただしそれはカフェのとき同様とても冷たい声だった。
というか、勢いで電話してしまったけれど何を話したらいいのか考えていなかった。
「……」
「……間違い電話なら切るぞ」
「あ、待って!」
どうしよう。何を話そう。
何か話出さないと電話を切られてしまいそうだ。
そして咄嗟に出てきた言葉。
「あ、あの!何か欲しいものないですか!」
「………あ?」
やってしまった。
本人には直接聞かないでおこうと決めていたのにダイレクトに聞いてしまった。
「こないだ、誕生日だったと聞いて…それで、何かお返しをしようとずっと思ってて…」
「…中島の野郎」
不機嫌さがそのまま声に出ている。
なんというか、少し怖い。
「いらねーよ。くだらねえこと考えんな」
そこでブチっと電話が切れた。