予想外の恋愛
カラン、と扉が開く音がして、入口のほうを見た。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは、ナギサちゃん」
「中島さん!」
今日も仕事の合間に来てくれたのだろう、スーツ姿の中島さんは奥の席に座るとアメリカンを頼んだ。
見たところ、一人だ。
そのことに寂しさを覚えながらも、どこかほっとしている自分がいる。
「お待たせしました」
「ありがとう。今ちょっと大丈夫かな?」
「あ、えっと…少しなら」
中島さんがカップを口元に運ぶ。
平日の昼過ぎに一人で来るのは珍しい。いつも朝田さんと一緒だから。
「ナギサちゃん、朝田の家は知ってる?」
「…はい?」
「家の場所。知らない?」
思えば中島さんはいつも唐突だ。
こちらが驚くようなことを聞いてくる。
「私の家と結構近いとは聞きましたけど…知らないですね」
「そう。実はあいつね、今日会社休んでて」
「え?何かあったんですか?」
「うん…かなり高熱が出てるらしい。風邪だと思うんだけど。一昨日から体調悪そうだったのに無理して働いてたから悪化したんだろうね」
朝田さんが風邪…。
風邪引くんだあの人、とかなり失礼なことを考えた。
「明日は土曜日だから、休むのは今日一日で済みそうなんだけど…あいつ一人暮らしだからちょっと心配なんだよね」
「…確かに一人暮らしの病気って心配にはなりますね」