予想外の恋愛
ただただ驚いて、何が起こったのかわからなくて、目を閉じることなんて出来なかった。
そのおかげで目の前で目を閉じている朝田さんの顔が見えて、この状況をリアルに感じた。
掴まれている手首の熱と背中に回された手のひらの熱、それに唇に感じる熱。
それは全身に血液のように巡って、侵される。
ゆっくりと離されたその熱は、離れてもまだ私に甘い痺れをもたらした。
すると、朝田さんの身体がグラっと揺れた。
「…うお、フラフラする。わりぃ、ちょっと寝るわ」
「あ…え?」
「適当に帰っていいから」
そしてベッドに倒れこむ朝田さん。
すぐに深い寝息が聞こえてきて、私は見事においてけぼりにされた。
唖然とその寝顔を見つめる。
今、何が起こった。
唇にはまだ朝田さんの熱が残っていて、さっきの出来事は夢ではないことを知らせている。
(ぇええええ!?)
キスされた。
朝田博人に。
はっきりとそう認識した途端、私の心臓は暴れ出す。
自分の荷物を抱えて、その部屋を飛び出した。
ほてった熱をなんとかしたくて、自分の家まで走って帰った。
だけどいつまでたっても熱は引かない。
唇の感触も消えない。
朝田さんはあんなに気持ち良さそうに眠っていたのに、私はその日眠れない夜を過ごしたのだった。