予想外の恋愛
二人でデートのようなことをした。
風邪の看病もした。
そして、キスもされた。
なのに朝田さんの気持ちはまったく見えなくて、自分の気持ちを伝える勇気もまだ無くて、私が躊躇っているうちに朝田さんには彼女が出来たかもしれない。
会社では猫被ってるという朝田さんの本性を知っているのはもしかしたら私だけかもしれないと、愚かな期待すらしていた。
一杯考えてしまうのに何も考えたくない。
「…お待たせ、しました」
出来上がったコーヒーを朝田さんの前へ置いた。
「…お前」
「ナギサちゃん…?」
「はい?」
すぐに手をつけずに、じっと私の顔を見ている朝田さんと、その横にいる中島さんが驚いた表情をしている。
「あの、よかったら冷めちゃう前に飲んでみてください…」
「それはそうするけど、なんだお前それ」
「それ?」
「…チッ」
小さく舌打ちした朝田さんがカップを持ち上げて口に運んだ。
「どう朝田。美味しいよね?」
中島さんが感想を催促すると、朝田さんがぐっと眉間にシワを寄せてカップをソーサーに置いた。
「どこがだよ。こんな不味いの飲んだことねえわ」
自分の顔から血の気が引いたのがわかった。
まるで全身の血液が下へと集まるような感じがした。
「え?嘘。そんなはず……ちょっと俺にもそっち飲ませて」
朝田さんに淹れたコーヒーを一口飲んだ中島さんの顔が、みるみるうちに険しいものに変わった。