予想外の恋愛
「…どうぞ」
「ありがとう」
奥のテーブル席に座ったその人が注文したカプチーノを運び、その場から離れようと思った。
だけど意思の強い瞳に見つめられ、タイミングを失った。
やっぱり私はこの人がーー川瀬さんが苦手だ。
偶然だろうけど、いつも朝田さんが座る奥のテーブル席に座った。そんな些細なことがまた心をざわつかせて、自分の中の汚い部分が顔を出す。
「ここにいつも朝田と中島が来るのよね?」
「はい、よくご来店頂きます」
「この前、あなたがいるカフェによくあの二人が行ってるって聞いて私も来てみたかったの。だけど場所聞いても二人とも教えてくれなくって…。この辺りが二人の営業の拠点だからつい探しちゃった」
(探しちゃった、って…)
にっこり笑う川瀬さん。
どうしてここに来たかったのか、どうしてそれを私に言うのか。
「ねえ…ここに来る時の朝田ってどんな感じ?」
「…はい?」
「ほら、あいつって前にも言ったけど普段猫被ってんのよ。仕事中は隠してるから…会社の人間でそれを知ってるのは中島と私ぐらいじゃないかしら」
それは暗に、朝田は自分には本性を見せてくれているのよ、と言いたいのだろうか。
「…あなたは知ってるの?」