予想外の恋愛
「よし、じゃあちょっとついて来て」
中島さんが急かすように手招きする。
「は?え?ちょっと待ってください。どこに…?」
「あ、ごめん。着替えたりしなきゃダメだよね。外で待ってるから帰る用意出来たら出てきて?」
そう言って中島さんは店の外へ出て行ってしまった。
顔いっぱいに疑問の色を浮かべて店長を見ると、にっこり笑っていた。
「…何か知ってるんですか?」
「いや?僕がナギサちゃんのために出来ることをしただけだよ。いつも頑張ってくれてる子にはいつも笑顔でいてもらいたいからね」
「それはどういう…」
「ほらほら中島さん待ってるから。早く用意して行っといで」
店長にまで急かされ、バックルームに飛び込んだ。
着替えを済ませ、結んでいた髪を解く。
バックルームを出る寸前、ぽつんと置かれた赤いコーヒーカップが目に入った。
しばらく練習もしていなかったから使っていない。
その姿が可哀想に思えて、袋に入れてカバンにしまった。
「お疲れ様です!お先に失礼します!」
「はいはいお疲れ」
ひらひらと手を振って笑顔で見送ってくれる店長は、やっぱりいつもと違う感じがした。