予想外の恋愛
「………お前、なんだこれ」
画面を私の方へ向けた朝田さんが、ものすごく怖い顔をしている。
「?………あ!」
携帯の画面には、
着信:要注意人物
の文字。
嫌いだったころに登録してそのままにしていたのをすっかり忘れていた。
「…誰が要注意人物だ。あ?」
「いや、これはその、ちょっと手違いで!」
「どんな手違いでこんなことになるんだよコラ!」
ま、まずい。
かなり怒っている。
ここは逃げるが勝ち。
「俺のどこに要注意してたんだよお前は!…っておい、待て!」
朝田さんの手から自分の携帯をひったくり、床に置かれたカバンを拾って玄関のドアへと全力で向かった。
「まだ話は終わってねえぞこの魔性女!」
「そんなの聞いてたら仕事遅刻しちゃうでしょこの最低男!」
「…んの野郎、帰ったら覚えてろ!」
「はいはいもういってきます!」
勢いよくドアを開けて帰路につく。
歩いていると、メールが届いた。
『仕事頑張れよバカ』
「ふふっ…なによこれ」
喧嘩をしても、言い合いをしても、それっきりにならない事が嬉しい。
どれだけお互いがひどいことを言っても、この先も一緒にいられる自信があるからだ。
青空の下、私の足取りは軽い。
そして私はまた、可愛げのない文章でメールの返事をするのだ。
fin...