予想外の恋愛
完璧な王子様
携帯に着信があったのは雨が降り注ぐ夜9時のことだった。
ディスプレイに表示された名前は”要注意人物”、つまり朝田博人だ。
連絡先を知ってから初めての電話に少したじろぐ。
まさか本当にかかってくるとは思ってなかったのだ。
スルーしようかと思ったけれど、後で面倒くさくなるのも嫌なので電話に出る。
「…はい」
「もしもし?俺」
「オレオレ詐欺なら間に合ってます」
「てめえ…」
電話越しの朝田さんの声は、何故だかいつもより穏やかに聞こえる。口の悪さは健在のようだが。
「お前、次の日曜休みなんだってな」
「えっこわい何で知ってるんですか」
「やかましいわ。日曜、13時にあのカフェの最寄り駅」
「はっ?」
「だから、日曜の13時に駅に来いって」
…意味がわからない。
一体何があるというのか。
「えっと、まあまあ嫌なんですけど…というより嫌な予感が…」
「うっせ、ワガママ言うんじゃねえ。黙って言う通りにしろ」
な…んだこの男は。
これじゃまるで…。
「脅迫?身代金目当て?」
「沈めるぞこの馬鹿女!」