予想外の恋愛
「では、スタートと言ったら一斉に抱っこしてくださいね?」
ちらっと近藤くんの顔を見ると、緊張しているのか表情がかたい。
「こ、近藤くん、無理しなくていいから。重たかったらすぐに降ろしていいから。ね?」
そう言うと近藤くんはこっちを見てニコッと笑った。
そして言ったのだ。
「…絶対降ろさない」
「ではいきますよ?よーい…スタート!」
「よっと」
「わっ!」
ひょいっと近藤くんに持ち上げられて、あっというまにお姫様抱っこされてしまった。
近い。近藤くんがものすごく近い。
会場の盛り上がりは最高潮で、みんな席を立って応援したり冷やかしたりだ。
「ナギサ、俺の首に腕回して、しっかり掴まってて」
「わ、わかった」
なるべく近藤くんが楽になるように、両腕でしがみついた。
付き合っていた頃でさえこんなことはしなかった。
多分あの頃だったら、恥ずかしいからって全力で拒否しただろう。
もちろん今だって最上級に恥ずかしいけれど、昔と違ってまわりの状況を感じ取る余裕ぐらいはある。
「ああーっと!ここで一組脱落です!」
気になって他のペアを見ると、男性が息を切らしてヘタっているのが見えた。
そしてちょうどもう一組、崩れおちた。
「またも脱落!残りは三組です!」