予想外の恋愛



近藤くんを見上げると、まだ余裕がありそうな顔をしている。


「ね、ねえ。大丈夫なの?」

「ん?なにが?」

「絶対重たいでしょ?腕抜けちゃうよ?」

「ぜーんぜん。…って、その上目遣いやめて。力…抜ける」

「え、ごめん」


かと言ってどこを見たらいいのか目のやりどころに困る。
目の前には近藤くんの喉仏があって、なんとなく自分のワンピースへ視線を落とした。


「…この前言ったこと、嘘じゃないから」

「…え?なに…」


私にしか聞こえないような声で、近藤くんがそっと囁く。

また一組が崩れ落ちた。
残りは二組。


「別れたこと後悔してるって言っただろ?あれ本気だから。ずっと忘れられなかったんだ」

「近藤くん…」

「だからもし今日会えたら、もう一回向き合って欲しいってずっと考えてた。もう一回、俺のこと好きになって欲しいって」


それはとても真剣な声で、本気でそう思っていることが伝わってきた。


「…好きなんだ」



「あーっと!ここでリタイアです!ということは、近藤さん、沖野さんペアの優勝でーす!」



わーっと歓声に包まれる中。

いつの間にかまわりの声や視線なんてまったく気にならなくなっていた私は、近藤くんが最後に言った言葉を頭の中で何度も繰り返していた。






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