予想外の恋愛






バイトが休みの日。

私は実家に向かっていた。
確かめたいことがあるからだ。



鍵を開けようとしたところで、ちょうどドアが開いたのでびっくりして後ずさる。


「うわっ!て、あれナギサ?」

「え?あ!お、お邪魔してました!」


ミナトとその彼女のみなみちゃんだ。


「こんにちは!もう帰るの?」

「今から飯食いに行ってくる。なに、今日来る予定だったか?おかん仕事でいないけど」

「ふらっと寄っただけだよ。いってらっしゃい。またね、みなみちゃん」

「はい!し、失礼します!」



仲良く歩き出した二人の背中を見送る。


いいなあと思う。
あんな風に幸せそうで純粋そうな恋愛なんて、もう随分していない。


「ミナトのやつ、昔は弱虫でビービー泣いてたくせに。一丁前に女の子リードとかしちゃって」


我が弟ながら、立派に成長している。
今度みなみちゃんとの馴れ初めを根掘り葉掘り聞いてやろう、と密かに企んだ。

私が高校3年生のとき、ミナトはまだ小学5年生だった。
可愛くて仕方なかった弟が今や身長180センチで彼女持ちとは。

はたから見ていると人は凄まじいスピードで成長していくのに、自分の成長は自分ではなかなか感じられない。
世間一般でいう25歳に自分がなれているのか自信もない。



お母さんが育てている玄関前の植木鉢を
横目で見て、深いため息がもれた。




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