予想外の恋愛
「お待たせしました!」
「ありがとうナギサちゃん」
これだ。この爽やかで完璧な王子様スマイルを見たかったのだ。
「本当にお久しぶりですね、お忙しかったですか?」
「そうだね。最近まで朝田と二人で営業以外の仕事担当してて。やっと営業に戻れたと思ったら、俺たちの代わりに回ってた後輩達の後処理が大変だったし」
「へえー、色々あるんですね」
「朝田なんて、友達の結婚式の二次会の日すら出勤してたよね。仕事終わってから直接行ったんだっけ?」
「あ?ああ、そうだったか」
ギクッとした。
その二次会に私も行っていたからだ。
「二次会だいぶ盛り上がってたんでしょ?楽しめた?」
「まあ…そうだな」
「いいな。俺のまわりは最近結婚するやついないなあ。…あ、ちょっとごめん」
「電話か?」
「うん、会社からだ」
そう行って中島さんが席を外した。
ふいに二人になって、少し気まずい空気が流れた。
「…なんで言わなかったんですか、私もそこにいたって」
「…お前こそなんで言わなかったんだよ」
「私は…なんとなく」
「俺もなんとなくだ」
続きをいうなら、なんとなく二人だけの秘密にしたいと思ったからだ。
「…お前さ。あの時の男…」
「えっ?な、なに?」
「…なんでもねぇ」
なんでもないんかい!
てっきり近藤くんのことを訊かれるのかと思ったけど違うのだろうか。