予想外の恋愛





「…ありがとうございました」


一時間程して、朝田さんと中島さんが席を立った。


「中島、会計しといて」


いつもなら会計が終わるまで中島さんと並んで立っている朝田さんが、一人さっさとお店を出て行く。


「756円です!…はい、1000円お預かりします」

「ねえナギサちゃん、やっぱりなにかあったの?」

「…244円のお返しです」


怒らせたのだろうか。

だけど、そんなのはいつものことだったはずだ。
今更どうして怒ったところを見て不安になるのだろう。


「朝田に聞いてもどうせ何も言わないだろうからナギサちゃんに聞こうかと思ったけど…なかなか厄介そうだね」

「…前に中島さん、朝田さんはこのお店で私に癒されてるって言ってましたよね」


それは中島さんとデートした時に言われたことだ。


「それ、やっぱり違うと思います。むしろ逆で…私は朝田さんを怒らせることしか出来てないような気がします」


実際、あの人の心から笑った顔を私は見たことがない。
今までそんなこと気にしていなかったのに、こんな時に気付く。


「あのさ。もしまだ間に合うなら再来週の土曜日空けといてくれない?」

「…え?」

「俺が二人の為に今出来ることってそれぐらいしか思いつかないからさ」




最後にニコッと笑って中島さんは帰って行った。








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