DarK wIngS
「この木はこの世にもう一本しかない、すべては人の手により滅してしまった。この木は大地と繋がっている限り本来の力を引き出し続ける。だが愚かな人間達はこの木で商売をした。それが余にも売れたからまた彼らは木を切りに行った。それでこの木はここに一本ひっそりと森に守られながら居るんだ。この木ももうすぐ力尽きる、時間の問題だ。」彼は木に触れた。その途端、木が返事をしたかのようにざわめいた。
・・・木が切られていなかったら、母は死んでいなかったのだろう。
そう思うと胸が痛くなる。ポトン。何かが水面に落ちた、水面が細かな円を書いて波打っている。 
・・・あっ、泣かないと決めていたのに。
「もっと木に近寄って。聞こえる?」
「何も・・・水の音がする」
「だろう?この木は特別で、中に何億という細くて繊細な管が通っている。その管から水と空気を吸い取っているんだ。だから上をごらん。とっても鮮やかな緑だ、水が隅々まで通っているから。今君か聞いているのはこの木の脈。どう?生きる勇気が沸いて来るだろう?」
・・・ええとっても。優しい音、ずっとここに居たい。でも・・・私には使命がある。母の夫、ルキュウル王国に王国第一魔術教官として幼い私と母を残し王国へ行った。母の死を伝えなければ。母はそれを第一に望んでいる。こんな事をしている場合ではない。行かなければ。
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