Sweet Sweet Pain【短編】
「メグ、ごめん!待った?」


ふいに声をかけられる。
目の前にユウキが立っていた。


「なにそれ。」


ユウキは食べかけのドーナツを見て笑う。


「遅れるっていうから、その辺歩いてたら見つけたんだ。新発売のドーナツだよ。」

「へぇ。っていうか、口の周りベタベタなんですけど。」


ユウキは笑いながらキスをして、あたしの唇の周りのシュガーコーティングを舐める。

甘いキス。

一瞬、自分がとろけて消えてしまう気がする。


「おー、甘い。俺にもひと口ちょーだい。」


ユウキはあたしの手を持ち上げてドーナツをかじる。
ひと口が、大きい。
ドーナツは、マルじゃなくなった。


「うーわ、うっめー!」


ユウキは無邪気に喜ぶ。


ユウキには、甘いだけ。
痛くない、とろけるだけの甘さ。
この関係は、きっと。


鈍い人だな、って思う。

だけど、ユウキの笑顔を見ていたら、あたしの心にはみるみる甘い感触が広がっていく。


愛しい。



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