あの続きは給湯室にて
もう午後八時を過ぎている。小さな町の小さな編集部に勤める私たちは、市内を中心に配布するフリーペーパーを作っている。
今回その中でクリスマス特集が組まれ、私たちが担当することになったわけだけど、それがなかなか難しいもので。
元々定時に終わることはほぼないこの仕事だが、ここ最近は更に忙しく、就業時間が過ぎてからも編集部へ籠り企画を練るという日が続いていた。
「それ何?」
「ん?どれ?」
それ、と私の鎖骨辺りを指差す先を手で
触るとヒヤリとしたものが指先に触れる。
「何って、ネックレスだけど。」
「そんなのしてたっけ?」
不思議そうにそう尋ねる彼に、首を振り否定をする。
このネックレスは人から貰ったものだ。
いつもお世話になっている印刷会社の人が、有給を使いハワイへ行ってきたらしい。
十日ぶりに会った彼はほどよく小麦肌になっており、初めて行ったというハワイの思い出を楽しそうに話してくれた。
そして最後に「君には特別にね。」なんて言葉を添えて、このネックレスをくれたのだ。