台風1号、居候。
第1話
『明日には上陸の模様』
事件一つ起きないこの平和な田舎町に、台風が上陸するそうです。
台風1号。
1号目が上陸するなんて、滅多にないことなんじゃと喜ぶ半面、学校が臨時休校になればいいなと願う。
今のところ連絡網は回ってきていない。
明日の朝になるんだろうな。
『豪雨や暴風に充分に注意し、外出はお控えください』
このキャスターにはパンチが足りない。
そんな柔らかな言い方では何も伝わってこない。
本当に台風が上陸するのかとさえ疑ってしまう程だ。
「くろまろもそう思うでしょ?」
夕飯のエビフライを頬張りながら、おとなしくとなりに座っているくろまろに問いかけると
くろまろは「にぃ」と小さく鳴いた。
「いいこいいこ。明日は外に出ちゃダメだよ」
返事の代わりに、くろまろは目をゆっくり細めた。
――猫と台風は同じくらい気まぐれだぞ。
昔、誰かがそう言っていた気がする。
思い出そうともしたけど、面倒なので途中でやめた。
明日、休みになりますように。