雪系男子のゆうちゃん
最近、あやちゃんはなんだか静かだ。
以前のように朝っぱらから、元気すぎて困る、みたいなことはなくなった。
空手の稽古が忙しいのもあるだろう。
特に気に留めてなかったが、今思えば何かあったのかもしれない。
といっても、察しの悪い俺にはもちろん分からない。
「ゆうちゃんのこと、もっと知りたい」
そんくらい、口で言えばいいのに。
以前なら、もっともっと踏み入ってきたし。
いつになく遠慮がちなあやちゃんが、なんとなく気がかりな俺である。
とはいえ、イケてるやつのように気の利いた言葉も思いつかない。
だから、とんとん、と手を伸ばしてあやちゃんの肩を突いた。
びっくりしたのか、急にこっちを振り向くから、
さらさらの髪からふわっといい香りが漂ってくる。
シャンプーの香り。
女の子みたいに、つやっとした柔らかそうな唇。
女の子みたいに、ふわふわしたほっぺ。
いつも少し潤んでいる大きな瞳…
強靭でいつも元気なあやちゃんのイメージから、
急にすごいギャップで俺に何かが押し寄せる。
こんなんだったっけ…あやちゃん。