雪系男子のゆうちゃん


「…っへ」


机に座る俺のおでこと、前に立つあやちゃんのおでこが触れる。


俺はあやちゃんの首元に手を回して、片方の手で耳に触れ、髪を触る。


「…っ、…」


あやちゃんが戸惑いながら、声にならない声を漏らす。


いい匂い。

さらさらの髪に触れて、ずっとこうしてたい。

可愛い、可愛い、柔らかい。

何かが、満たされる。

なのに、欲情してもっと、もっとどうにかしたくなる。

……

はぁっと湿った息が俺の喉を通って漏れる。


「…可愛い」


かすれた自分の声を聞いて、少し冷静になった。


あやちゃんが、まだ鼻が触れ合う距離で泣きそうな顔で俺を見る。


俺は、両手でそっとあやちゃんを押した。


「…こほっ…なんでもない…ごめん…」


あやちゃんは、「…ん、うん…うん…」と小刻みにうなずいて、所在なさげに目を泳がせる。


俺は俯いて手で口を押さえ、片方の手でズボンを押さえながら……

上目遣いになりながら情けないことをお願いした。



「ごめん、あやちゃんしばらくあっち向いてて……」

「へ…」

「1分でいいから、俺の方見ないで、お願い」

「…わ、わ、わかった…!!」


パニック状態のあやちゃんは、ガタッと俺の隣の椅子を引いて座ると、廊下の方を向いて突っ伏した。


俺はため息をついて、机の上であぐらをかき、

黒板の消されたあとを見ながら、邪念を払う1分を過ごした。




< 176 / 188 >

この作品をシェア

pagetop