雪系男子のゆうちゃん



「え」

びっくりしてよく見ると、やっぱり目に涙をためている。

「え、なんで?」

お察しの通り、察しの悪い俺はそう聞くことしかできない。

男がこの世でなによりも苦手なもの、それは女の涙である。
あやちゃんの長い睫毛に光る涙が、あふれて溢れる。まゆが震える。下唇を噛む。


気の弱い俺は、ほかの誰かがこの光景を見たらどうするかなどと考えて、

風のような速さで、サッと自分のカーデガンの袖にあやちゃんの涙を染み込ませ、証拠を隠滅した。


「…どうしたの」

ひとまず証拠を隠滅したあと、そう聞く。



すると、今まで怒ったような困り顔だったあやちゃんの表情が、みるみるうちに崩れて、


「え、なんで笑ってんの」


あっという間に声を上げて笑い出した。


「あっはっはっは、ゆうちゃんずるい!

自分が泣かせたと思われたくないから、真っ先に涙拭いた!」


今までの表情のかけらも残さない爽快な笑顔で爆笑するあやちゃん。

確か入学式の日、俺が数学の教科書を読んでいた時も、こんな風に笑われたと記憶している。

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